エイトノット
国内の小型船舶数は約31万(※1)で、国内を航行する船舶の大部分を占めていると言われます。小型船舶は離島住民の公共交通機関や物流手段などに利用されることが多く、高齢化に伴い操縦士不足が喫緊の問題として認識されているエリアが多数存在します。
また航行には、風や波の状況、他船や障害物など、常に周囲の状況監視が必要です。そのため操縦士の技術や経験値に頼る部分が大きく、事故の約半数はヒューマンエラーによるものという調査結果もあります(※2)。
※1 出典:日本小型船舶検査機構「令和3年度在籍船数」
※2 出典:内閣府「令和4年版交通安全白書」
エイトノットはこのような小型船舶の社会課題を解決するため、全自動で安全航行を実現する小型船舶向け自律航行プラットフォーム「エイトノット AI CAPTAIN」を2022年10月に発表しました。
タブレットをタップするだけで、AIが自動的に最適なルートを設定し、目的地まで安全に自律航行します。船体には国の測位衛星「みちびき」を活用した高精度な位置情報システムと、他船はもちろん、海に浮かぶ鳥までも検出できるレーザースキャナーを搭載。対象に応じた適切な回避・避航操船に加え、離岸・着岸も自動で行うことができます。
現行法では無人での自律航行が許可されていないため、操縦士による操船をアシストする機能として「エイトノット AI CAPTAIN」を利用し、無人航行に関する法律やガイドラインの整備に向けてさまざまな実証実験を重ねています。
法律の壁により現在はまだ実現できない無人航行ですが、2028年1月を目標にIMO(国際海事機関)が対応する条文策定に向けて動き出すなど、国内外で法改正の動きが進められています。
エイトノットはそのタイミングで圧倒的なシェアを獲得し、自律航行のプラットフォーマーになるべく、さまざまな実証実験に取り組んでいます。
2023年1月には「エイトノット AI CAPTAIN」を実装した水上タクシーの試験営業を広島県で実施し、安全性の実証を行いました。その他にも国や自治体から合計10の実証事業に採択され、なかでも2023年度に採択されたNEDOの「SBIR推進プログラム」では、小型船舶向け自律航行システム開発と安全性指標の確立の実証に取り組み、関連機関に対して小型船舶の無人航行実現に向けたガイドラインの提案を実施するための検証を行う予定です。
エイトノットはまず、既存の船舶に「エイトノット AI CAPTAIN」を物理的に後付けで搭載させるレトロフィット型の事業展開を構想しています。事業運営のマネタイズと、小型船舶の挙動データ収集の2つの目的を効率的に達成するためです。
将来的には自ら収集した膨大なデータを活かし、あらゆる小型船舶の自律航行を可能にするソフトウェア提供を軸とした、より収益性の高いビジネスモデルの構築をめざしています。
ノルウェーやオランダ、韓国などで船舶向けの自動運転技術を提供する企業が頭角を見せ始め、世界の注目度が高まるなか、エイトノットは2026年を目処に自律航行への関心が特に高いヨーロッパへの進出を計画しています。
ゆくゆくは小型船舶だけでなく、すべての水上モビリティへの自律航行システム搭載をめざすエイトノット。自律航行技術を皮切りに、今までにない海起点のビジネスや新しい経済圏をも創出するという壮大なゴールに向かって、事業展開の航海は続きます。
カリフォルニア州立大学を卒業後、アップルジャパンを経て、デアゴスティーニ・ジャパン入社。コミュニケーションロボット「ロビ」をはじめとするロボティクス事業の責任者を務める。その後、バルミューダにて新規事業立ち上げを担当し独立。ロボティクス系スタートアップ企業のマーケティング、PR戦略や、大手メーカーの商品企画を手掛けた。SUP、ダイビングなどマリンアクティビティを介して、海の魅力に引き込まれる。パドラー、ダイバー、一級小型船舶操縦士。