iPS細胞でコスト大幅減
がん治療の未来を切り拓くT細胞療法を実現

シノビ・セラピューティクス株式会社

がん治療の常識をくつがえす細胞療法の課題

免疫細胞の一つであるT細胞を患者から採取し、がんを攻撃する遺伝子を注入したあと患者の体内に戻すという、がん治療のための細胞療法が注目を集めています。2019年には、白血病をはじめとする血液がんの最新治療「CAR-T(カーティー)細胞療法」が国内で初承認されました。細胞療法はがん細胞に標的を絞ることができるため、抗がん剤や放射線治療に比べて患者へのダメージを大幅に軽減するメリットがあります。
しかしながら、患者自身の細胞(自家細胞)を使用することで製造コストがかさみ、また患者のT細胞がすでに弱っているため治療に使えない状態であるケースも多く、普及には至っていません。患者以外の細胞(他家細胞)を使えばこれらのデメリットは解消されますが、患者の免疫システムが自分以外の細胞を拒絶してしまうという別の課題が生じるため、他家細胞由来の効果的な治療法の開発は難しいとされてきました。

拒絶反応を回避するiPS細胞由来のT細胞生成プラットフォームを構築

iPS細胞を使ってこれらの課題を一挙に解決する技術を開発するのが、「シノビ・セラピューティクス」です。
京都大学発iPS細胞研究所(CiRA)の金子新教授が開発を進めてきたiPS由来のT細胞療法と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のTobias Deuse教授が発明した世界最高峰の免疫回避技術を掛け合わせ、患者の免疫機構からの拒絶を回避できるiPS細胞由来の他家T細胞生成プラットフォームの構築をめざしています。生産技術は最終化を進めており、2024年からは非臨床試験を実施していく予定です。

T細胞を安価で大量に生産可能に

現在、自家細胞由来のCAR-T細胞療法には1回3000万円超の費用(保険適用前)を要しますが、シノビ・セラピューティクスが開発する免疫回避型の他家T細胞を使用した療法では1回数10万円~100万円程度に抑えられると想定されています。
また本iPS細胞由来他家T細胞は、同社のプラットフォームで大量に複製し保管可能です。これにより、細胞療法開始までのリードタイムも大幅に短縮できます。

固形がんや自己免疫疾患への領域展開も

同社のプラットフォームが生み出すT細胞は免疫回避能力が備わっているため、患者の体内で長く効果を発揮します。現在はCAR-T細胞療法をはじめ、がん細胞へのアクセスが容易な血液がんのみに対応する細胞療法が確立されていますが、本技術を活かし、T細胞が到達しづらい組織内の固形がんにも効果を発揮する治療法の実現をめざします。
さらに、当該iPS細胞から多様なT細胞を即座に作り出す技術開発も進めており、将来的にはさまざまながんに対応できるT細胞療法をはじめ、自己免疫疾患に対応する細胞療法への展開も計画しています。

日米2拠点で技術・ビジネスともにトップをめざす

シノビ・セラピューティクスは、2015年に金子新教授が設立した京都大学発ベンチャー、サイアスを出発点としています。2022年2月にシリーズBにおける21.3億円の資金調達でアメリカ進出を果たし、2023年1月には米国Thyas Inc.を親会社とする組織再編を実施。2023年7月にアメリカの親会社がShinobi Therapeutics, Inc.へと社名変更したため、子会社となっていた日本のサイアス株式会社もそれに倣う形でシノビ・セラピューティクスに改名しました。米国本社には、Daniel Kemp氏をCEOとして事業を展開しています。
CiRAや国立がん研究センターとの共同研究を進めるため、引き続きiPS細胞開発の研究拠点は京都としながら、開発されたiPS細胞への免疫拒絶回避技術の導入、臨床ステージに向けた治験申請、資金調達をサンフランシスコで行っています。早々にアメリカにビジネス拠点を移したことが功を奏し、2023年12月には5100万ドル(約74億円)のシリーズAを完了させました。京都・サンフランシスコ両拠点が連携して技術開発に磨きをかけると同時に、遺伝子細胞治療において最先端をいくアメリカでグローバルに戦う素地を整える体制を組んでいます。

京都とサンフランシスコで生まれた高度な技術が組み合わさり、スタートアップの段階で業界のマーケットの中心地であるアメリカで勝負を挑んだシノビ・セラピューティクス。圧倒的な技術力を武器に、グローバル企業への道を着々と歩み続けます。

代表取締役社長CEO/CTO 等泰道

熊本大学卒業、医師免許取得。同大学院、免疫学で博士取得。熊本大学医学部助手、東京大学医科学研究所助手を経て、スタンフォード大学でレトロウイルスを用いた機能ゲノミクス(functional genomics)に従事。Rigel Pharmaceuticals, Inc.に入社し、腫瘍学や代謝学分野の創薬研究開発(創薬標的の同定と前臨床試験)ならびに治験薬許可申請に研究主事として従事。約20年近くのバイオベンチャーにおける創薬研究開発の経験と実績を有する。2017年から京都大学発ベンチャーであるシノビ・セラピューティクス社にて、低免疫原性化のゲノム編集をされたiPS細胞から分化誘導したキラー活性の高いT細胞を使った免疫療法の開発を行う。

代表取締役COO/CFO 五ノ坪良輔

総合商社の投資・事業開発支援チームのヘッドとして、幅広い分野における国内外の事業投資、M&A、ベンチャー投資等を数多く推進。事業部に伴走してビジネススキーム構築、ビジネスプラン策定、投資契約交渉等、商社における新規事業開発の総合的な支援を行う。
自らも社内ベンチャーとして電気自動車充電インフラサービスやスマホアプリ等の事業を立ち上げた経験を持つ。2015年9月より京都大学イノベーションキャピタル㈱にて投資を担当。2020年よりサイアス株式会社(現シノビ・セラピューティクス株式会社)代表取締役COO/CFOとして、ビジネス・ファイナンス面を主導。京都大学法学部卒業。カーネギーメロン大学MBA。

企業概要

名称
:シノビ・セラピューティクス株式会社
役職 / 代表者氏名
:代表取締役社長CEO/CTO 等泰道
:代表取締役COOCFO 五ノ坪良輔
設立年月日
:2015年8月24日
所在地
:〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46-29
事業内容
:低免疫原性を付与したiPS細胞由来免疫細胞療法の研究・開発
企業ホームページ(米国)
https://www.shinobitx.com/

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